「消防士って、実際どれくらい稼げるんだろう?」と気になっている人は多いはずです。危険な仕事のわりに給料が低いというイメージを持っている人もいれば、公務員だから安定しているだろうと思っている人もいると思います。
この記事では、消防士の平均年収を年齢別・地域別・階級別にまとめています。手取りの目安や、他の公務員との差、年収を上げる方法まで一通り確認できます。
消防士の平均年収はいくら?
年収の話に入る前に、まず「消防士の給料は何で決まるのか」を押さえておくと数字が頭に入りやすくなります。消防士は地方公務員なので、給与は自治体ごとに定められた俸給表をベースに、さまざまな手当が加算される仕組みです。基本給だけ見ると「意外と低いな」と思うことがありますが、各種手当を含めた総支給額にすると印象が変わります。
全国平均は約652万円
総務省の令和6年4月1日地方公務員給与実態調査によると、消防士の平均年収は約652万円です。国税庁の同調査で示された民間給与所得者の平均年収が約478万円なので、それと比べるとかなり高い水準にあります。
ただし「全国平均652万円」という数字には、40〜50代のベテランや管理職クラスも含まれています。入庁したばかりの20代が同じ額をもらえるわけではないので、年齢ごとの数字も合わせて確認するのが大事です。その点は後の「年齢別の推移」で詳しく触れます。
手取りに換算するといくら?
額面と手取りは別の話です。年収652万円の場合、税金や社会保険料を引いた手取りの目安は月22〜26万円前後になるケースが多いです。扶養家族の有無や住んでいる地域、各種控除の状況によって変わるので一概には言えませんが、ざっくりとした生活水準のイメージとして参考にしてください。
正直、20代前半の入庁直後は月の手取りが18〜20万円台というケースも珍しくありません。「公務員だから裕福」というイメージと、実際の若手の手取りには少しギャップがあります。年功序列で着実に上がっていくのが消防士の給与の特徴なので、長い目で見ることが大切です。
初任給の目安(高卒・大卒)
初任給は採用試験の区分と自治体によって変わります。たとえば東京消防庁でⅠ類(大卒程度)として採用された場合の初任給は、基本給に地域手当を加算した約302,100円が目安です。一方、地域手当のない地方の自治体ではここから約20%低くなるイメージです。
高卒と大卒では初任給に約5万円の差があります。高卒採用の場合は月給15万円前後からのスタートになる自治体も多く、大卒の20万円前後と比べると差がはっきりしています。ただし、消防士の場合は昇任試験さえクリアすれば学歴に関係なく階級が上がっていくので、長期的な年収はキャリアの積み方次第で変わります。
年齢別・キャリア別の年収推移
消防士の年収は、年齢が上がるにつれてほぼ確実に増えていきます。民間企業のように「リストラされたら終わり」という不安がない分、長く働けば働くほど給与が積み上がるのが公務員の特徴です。ここでは年代ごとのおよその年収を地域別のデータも交えて確認します。
20代の年収(入庁〜5年目)
20〜23歳の年収は、都道府県平均で約284万円、東京都では約324万円です。24〜27歳になると都道府県平均で約328万円、東京都で約362万円まで上がります。入庁直後と5年目では年収に50〜80万円ほどの差が出る計算です。
20代のうちは「正直、思ったより少ない」と感じる人も多いようです。ただこの時期は基本給のベースを着実に上げている段階で、同時に昇任試験の準備もできます。夜勤手当や出動手当が毎月の給与に上乗せされるため、手当次第で同じ年齢でも実収入にばらつきが出てきます。
30代の年収(中堅として現場を担う時期)
32〜35歳では都道府県平均で約444万円、東京都で約472万円になります。36〜39歳になると都道府県平均で約501万円、東京都で約537万円まで伸びます。民間企業の平均年収に並んでくる時期です。
30代は昇任試験にチャレンジするタイミングでもあります。消防士から消防士長、その後は消防司令補と階級が上がれば、基本給の上がり方が変わってきます。年功序列で上がる部分に加えて、昇任による「ジャンプアップ」が30代後半の年収に大きく影響します。
40〜50代の年収(昇進と役職手当)
40〜43歳では都道府県平均で約565万円、東京都では約599万円。48〜51歳になると都道府県平均で約643万円、東京都で約661万円まで上がります。50代後半では都道府県平均で約695万円と、全国平均の652万円を超えてきます。
注目したいのは、民間企業では50代から年収が頭打ちや下落傾向になることが多いのに対して、消防士(公務員)の場合は定年まで上がり続ける点です。管理職ポジションに就けば役職手当も加わるため、50代前後でキャリアの集大成として年収が最も高くなる人も少なくありません。
消防士の年収が低いといわれる理由
「消防士は給料が低い」という話を耳にしたことがある人もいるかもしれません。平均年収のデータを見ると決して低くはないのですが、特定の状況では「低い」と感じやすい側面があります。どういった点でそう感じるのかを整理しておきます。
入庁直後は300万円台からのスタート
20代前半で入庁したばかりの時期は、年収300万円台になることが多いです。同世代の民間企業勤務と比べたときに、特に都市部の企業に就職した友人と差を感じる場面があるかもしれません。平均年収652万円というデータは全年齢・全階級を含んだ数字なので、若いうちはそこに届かないのが実情です。
ただし、この時期の低さはあくまで「スタート地点の話」です。年功序列で着実に上がっていく設計になっているため、30〜40代に向けて給与の伸び幅が大きくなります。「今は低くても、長く続ければ積み上がる」という見通しを持てることが、消防士という職の特徴でもあります。
昇給が年功序列でゆっくり上がる
消防士の昇給は原則として年1回で、基本的には毎年4号俸の昇給です。業績評価次第で最大8号俸まで上がることもありますが、民間企業のように「実績を出したら大幅に昇給する」という仕組みではありません。
努力や成果を給与にすぐ反映させたい人にとっては、この年功序列の構造がもどかしく感じられることがあります。「頑張っても頑張らなくても給料が大して変わらない」という声が出やすいのも、この昇給の仕組みが背景にあります。
副業禁止でプラスが狙えない
公務員は原則として副業が禁止されています。消防士も例外ではなく、本業以外の収入を増やすことが難しい立場です。民間企業であれば副業・投資・フリーランスなど収入を上乗せする手段がありますが、消防士にはそのルートが基本的に閉ざされています。
「本業の給料は安定しているけれど、増やす手段が限られている」という点が、年収の上限を感じやすい一因になっています。給与の天井がある程度見えやすいのが、公務員としての消防士のリアルな側面です。
地域別・自治体規模別の年収差
消防士の年収は「どの自治体に所属しているか」で大きく変わります。同じ消防士でも、勤務先が東京消防庁なのか、地方の町村の消防本部なのかで、年収に100万円以上の差が生まれることもあります。自治体の規模と財政状況が給与水準を左右するためです。
東京消防庁は突出して高い
地域別のデータを見ると、東京都の消防士は若い年齢帯でほかの地域との差が顕著です。20〜23歳の段階ですでに都道府県平均との差は約40万円あります。これは東京消防庁の地域手当が高いことが主な理由です。
地域手当は基本給に対して一定の割合で上乗せされる仕組みで、東京都は最高水準の20%が適用されます。同じ基本給でも地域手当の有無で年収が大きく変わるため、勤務地の選択は年収に直結する問題です。
政令指定都市と町村では100万円以上の差も
政令指定都市(札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡など)の消防士の年収は、東京都に次ぐ水準です。たとえば40〜43歳では政令指定都市平均で約581万円、町村では約536万円と、約45万円の差があります。
年齢が上がるにつれてこの差は広がる傾向があります。56〜59歳では政令指定都市が約697万円に対して町村が約669万円と、約30万円ほどの差になります。絶対額としては大きな差ですが、生活コストが低い地方では実生活の豊かさが変わってくることも覚えておきたいポイントです。
都道府県別の年収ランキング(上位・下位を比較)
全国の消防士の年収を地域区分別に見ると、高い地域と低い地域でかなりの差があります。主要な地域の平均月額給与を比較すると傾向がわかります。
| 地域区分 | 平均月額給与(全年齢) |
|---|---|
| 東京都 | 約34.8万円 |
| 政令指定都市 | 約33.9万円 |
| 都道府県(平均) | 約32.9万円 |
| 町村 | 約31.3万円 |
東京都と町村を比較すると月額で約3.5万円の差があり、年換算では約42万円になります。ボーナスを含めると差はさらに大きくなります。大都市ほど財政規模が大きく、地域手当も高く設定されているため、この差は構造的なものといえます。
階級別の年収(消防士〜消防司監まで)
消防士の年収を語るうえで、階級は外せない要素です。公務員は年齢だけで給与が決まるのではなく、階級(職制上の段階)によって適用される俸給表の「級」が変わり、昇給ペースも変わります。昇任試験に合格して階級を上げることが、年収アップへの最短ルートになります。
消防士・消防士長(1〜2級)の年収
消防士(1級)の基本給月額の範囲はおよそ19.5万〜37.5万円(推定)です。消防士長(2級)になると22万〜33万円(推定)の範囲に入ります。同じ「消防士長」でも年齢によって給与に大きな開きがあるのは、号俸が毎年積み上がるためです。
大卒で入庁した場合、勤続2年で消防士長への昇任試験を受ける資格が得られます。試験に合格すれば2級に上がり、俸給表が変わって1号俸あたりの昇給額が増えます。若いうちに階級を上げると、その後の年収の積み上がり方が変わってくるため、昇任試験への取り組みが将来の年収を左右します。
消防司令補・消防司令(3〜5級)の年収
消防司令補(3級)の基本給月額はおよそ24.2万〜40.4万円(推定)、消防司令(4〜5級)は26.5万〜48.5万円(推定)とされています。消防司令は東京消防庁では係長・出張所長クラス、政令指定都市では副署長・所長クラスに相当します。
消防司令補に上がるには、消防士長になってから4年以上の勤続が必要です。さらに消防司令になるためには消防司令補から6年以上の勤続が必要になります。階級が上がるほど在職要件が長くなるため、キャリアの序盤でどれだけ着実に昇任できるかが後の年収に大きく影響します。
消防司令長・消防監・消防司監(6級以上)の年収
消防司令長(6〜7級)の基本給月額はおよそ28万〜51万円(推定)で、東京消防庁では方面本部課長・室長クラスにあたります。消防監(31.5万〜55万円推定)、消防司監(49万〜65万円推定)と上がるにつれて、月額ベースでも相当な水準になります。
これらの上位階級まで昇り詰めた場合、年収は管理職手当や役職手当も含めてかなり高くなります。ただし、消防司監以上に上がれる職員はごく少数で、大規模な消防本部に限られます。現実的なキャリアゴールとして「消防司令〜消防司令長」を目指すケースが多いようです。
消防士ならではの手当・ボーナス
消防士の年収を構成する要素は基本給だけではありません。夜勤・出動手当などの各種手当と、年2回支給されるボーナスが年収に大きく上乗せされます。手当の種類が多いことが、基本給が「思ったより低い」と感じる人でも年収トータルでは高くなりやすい理由のひとつです。
夜勤・出動手当でどれくらい変わる?
消防士には危険な仕事に対する特殊勤務手当が設けられています。主な手当の種類は以下のとおりです。
- 危険作業手当(火災・救助現場への出動)
- 不快作業手当(特殊環境下での業務)
- 重勤務手当(過酷な勤務に対する加算)
- 非常災害業務手当(大規模災害対応)
- 消防業務手当(消防署での日常業務)
出動回数や勤務形態によって手当の金額が変わるため、同じ階級・同じ年齢でも手当の多さで月収に差が出ます。現場への出動が多い署に配属されると、手当分だけ年収が高くなる可能性があります。
ボーナスの計算方法と平均支給額
消防士のボーナス(期末手当+勤勉手当)の平均支給額は年間約159.7万円(令和6年調査)です。民間企業のボーナスと異なり、業績に関係なく俸給表をベースにした計算式で算出されるため、支給額が安定しているのが特徴です。
支給時期は通常6月と12月の年2回で、支給額は基本給に支給率を掛けて計算します。階級が上がって基本給が増えれば、ボーナスも連動して増えます。ボーナスを含めた年収のトータルで考えると、基本給だけを見て「低い」と判断するのは少し早計かもしれません。
退職金はいくらもらえる?
公務員の退職金は民間企業と比べると高水準です。消防士が定年(60歳)まで勤め上げた場合、退職金の目安は2,000万〜2,500万円前後といわれています。自治体や勤続年数、最終的な階級によって変わるため一概には言えませんが、長く勤めるほど退職金が増える仕組みになっています。
退職金を含めて生涯年収で比較すると、若いうちの年収の低さが相対的に薄まってきます。「若い頃は低くても、定年まで勤め上げれば総額として大きくなる」という構造が、消防士という職を長期的なキャリアとして選ぶ理由のひとつになっています。
警察官・自衛官・一般行政職との年収比較
「消防士より警察官のほうが給料が高い」という話を聞いたことがある人は多いと思います。同じ公安職でも、年収には差があります。
総務省の令和6年の調査によると、警察官の平均年収は約746万円で、消防士の約652万円と比べて約94万円高くなっています。この差の主な原因は時間外勤務手当の差にあります。消防士の時間外勤務手当の平均が月約22,655円であるのに対して、警察官は月約51,810円と倍以上の差があります。また、宿日直手当も警察官(約7,295円)のほうが消防士(約133円)を大きく上回っています。
一方、一般行政職の公務員と比べると消防士のほうが高い傾向にあります。消防士に適用される「公安職俸給表(一)」は一般行政職の俸給表よりも高く設定されているためです。自衛官との比較は階級・部隊・勤務形態によって大きく異なるため一概に言えませんが、おおむね同水準か消防士がやや低いとされています。
年収を増やすには昇進が近道
消防士として年収を上げるには、副業もできないし、成果報酬もない。では何ができるかというと、昇任試験に合格して階級を上げることと、給与水準の高い自治体で働くことの2つが現実的な選択肢です。
昇任試験を受けて階級を上げる
消防士の年収を大きく変える一番のレバーは昇任試験です。試験に合格して級が上がると、1号俸あたりの昇給額が増えるため、その後の年収の伸び方が変わってきます。同じ年数をかけて号俸を積み上げるにしても、早めに級を上げたほうが到達できる年収の上限が高くなります。
消防士長への昇任試験は大卒なら勤続2年から受験可能です。その後の消防司令補、消防司令と段階的に昇任試験があります。「試験勉強が大変」という声も多いですが、年収という観点から見ると昇任試験への取り組みは長期的な投資といえます。
大規模な消防本部(政令市・東消)を目指す
採用段階で「どこの自治体を受けるか」も年収に直結します。東京消防庁や政令指定都市の消防本部は、地域手当が高く設定されているため、同じ階級・同じ年齢でも年収が高くなりやすいです。東京消防庁の場合、地域手当20%が基本給に上乗せされるので、地域手当ゼロの自治体と比べると同じ基本給でも年収に約20%の差が生まれます。
ただし、大規模な消防本部は採用試験の倍率が高く、東京消防庁のⅠ類(大卒程度)は約6〜10倍の競争率です。年収と採用難易度はある程度比例しているので、受験先を選ぶ際は給与水準と自分の対策状況を合わせて考えておきましょう。
まとめ:消防士の年収は長く勤めるほど強くなる
消防士の平均年収は約652万円で、民間給与所得者の平均(約478万円)を大きく上回ります。年齢・階級・勤務地によって幅があり、東京消防庁や政令指定都市では高く、町村では低くなる傾向があります。
若いうちは300万円台からのスタートで「低い」と感じやすいですが、年功序列で着実に上がり、ボーナスや退職金を含めたトータルでは安定した水準を維持できます。年収アップを狙うなら昇任試験への挑戦と、規模の大きい消防本部への就職が現実的な方法です。消防士という職の年収は、長く続けることで本当の強さが出てきます。






