転職を考えているけれど、「どの職種に移ればいいかわからない」という状態、けっこう多くの人が経験することです。業界は絞れても、職種まで具体的にイメージできていないと、転職活動はなかなか前に進みません。
この記事では、2026年の転職市場で実際に求人が増えている職種を10個に絞って紹介します。未経験から入りやすいかどうか、年収がどう変わるか、自分に向いているかどうかの3つの視点で読み進めてみてください。
転職で職種選びが大事な理由
転職を考えるとき、多くの人がまず「どの業界に行くか」を考えます。でも正直、業界よりも職種のほうが、転職後のキャリアや年収に大きく影響します。なぜそう言えるのか、ここで整理しておきます。
業界より職種で市場価値が変わる
同じIT業界にいても、営業とエンジニアでは求人の多さも年収の幅もまったく違います。「IT業界に転職したい」という軸だけで動いていると、いざ活動を始めたときに「何のポジションで応募すればいい?」と迷うことになります。
職種を軸にすると、スキルの積み方が明確になります。「自分はマーケターとして動きたい」と決まれば、必要な知識も取るべき行動も絞られる。逆に言えば、職種が決まっていない転職活動は、方向性が定まりにくいのです。
2026年上半期のdoda調査でも、求人数が増えている分野として営業・経理・マーケティング・IT・メディカルなど9分野が挙がっています。これらは業界をまたいで需要がある職種ばかりです。職種を持っていると、業界が変わっても「戦える」状態になれます。
「転職しやすさ」と「稼ぎやすさ」は別の話
「未経験歓迎」の求人が多い職種ほど転職しやすいのは事実です。でも、入りやすいことと年収が上がりやすいことは、必ずしも一致しません。
たとえば販売・接客職は未経験歓迎率がほぼ100%ですが、平均年収は300万円台が多く、キャリアアップの幅も限られます。一方、ITエンジニアや法人営業は最初のハードルがやや高めでも、3〜5年後の年収の伸び方がまったく違います。
転職のゴールが「年収を上げたい」なのか「安定した仕事に就きたい」なのかによって、選ぶべき職種は変わります。まずは自分のゴールを確認してから、この先を読み進めてください。
転職におすすめの職種10選
ここからは、2026年の転職市場で実際に求人が増えていて、かつ将来的にも需要が見込める職種を10個紹介します。それぞれの未経験からの入りやすさ、年収感、向いている人の特徴を中心に説明します。
1. ITエンジニア(Webエンジニア・インフラエンジニア)
転職先として人気が高い職種の筆頭が、ITエンジニアです。なかでもWebエンジニアやインフラエンジニアは求人の数が多く、2026年現在もクラウドエンジニア・インフラエンジニアの求人倍率は2.8〜3.5倍前後で推移しています。
平均年収は440〜580万円ほどで、スキルと経験次第で800万円を超えることも珍しくありません。未経験から入るルートとしては、プログラミングスクールで基礎を学んでSES(システムエンジニアリングサービス)企業に入り、そこから自社開発企業へ転職する流れが一般的です。
「プログラミングは難しそう」と感じる人も多いと思いますが、最初から高度なことが求められるわけではありません。手を動かして問題を解決するのが苦にならない人なら、十分に続けられる仕事です。
2. 営業職(法人営業・SaaS営業)
営業職は、転職市場での門戸の広さという意味では上位に入ります。未経験歓迎の求人も多く、ポテンシャル採用でキャリアをスタートしやすい職種です。
特に注目したいのがSaaS(サブスクリプション型ソフトウェア)企業の法人営業です。フィールドセールスのポジションは年収600〜1,000万円前後が相場で、外資系やエンタープライズ向けの営業になると30代で1,200万円以上になるケースもあります。
「営業=トークが上手い人」というイメージがありますが、実際には聞く力と提案力のほうがずっと大事です。相手の課題を整理して言語化できる人は、営業職で成果を出しやすい傾向があります。
3. Webマーケター
広告やSNS、SEOを使って集客や販売促進を担うのがWebマーケターです。デジタルマーケティング市場の拡大が続いているため、2026年現在も求人の数は安定して多い状態です。
未経験スタートでは年収330〜400万円前後が多いですが、経験を積んだマネージャー職では600万円、大手企業では1,000万円前後に達することもあります。SNS広告・SEO・データ分析のスキルを組み合わせると、転職市場での評価が高まります。
「数字を見て改善策を考えるのが好き」という人には、かなり向いている仕事です。逆に、感覚やセンスだけで仕事したい人には少し合わないかもしれません。
4. データアナリスト
企業のDX推進やAI活用の波に乗って、データを読み解ける人材の需要が伸び続けています。データアナリストは、業界を問わず必要とされる職種のひとつです。
平均年収は約600万円で、AIエンジニアレベルになると1,050万円超の事例も出ています。入口としてはExcelやSQLの基礎スキルが使えれば十分で、そこからPythonや統計知識を積み上げていくルートが現実的です。
「なぜこの数字になるのか」を考えるのが好きな人には、日々の仕事がそのまま面白さにつながる職種です。実務2〜3年で年収500万円以上が狙えるため、コスパのいいキャリアチェンジの選択肢のひとつといえます。
5. カスタマーサクセス
SaaS業界が急拡大するなかで、特に需要が高まっているのがカスタマーサクセスです。導入後の顧客が製品を使いこなせるよう支援し、解約を防ぐ役割を担います。
年収は経験者で1,000〜1,500万円前後、未経験・20代でも600〜900万円前後のポジションがあります。ITの深い知識よりも、顧客との関係構築力が評価される職種なので、文系出身や異業種からでも入りやすいのが特徴です。
営業経験やサポート経験がある人は特に強みを活かしやすく、「人と長期的な関係を築くのが好き」という人にはとても向いている仕事です。
6. 施工管理(建設・設備)
建設・設備の施工管理は、全産業のなかで特に人手不足が深刻な職種です。有効求人倍率は建設・採掘職で5.76倍(厚労省2025年データ)と、他の職種と比べても格段に高い水準にあります。
平均年収は500万円前後で、1級施工管理技士の資格を取得するとさらに上がります。2024年に建設業の時間外労働規制が適用されたことで、業界全体で処遇改善が進んでいます。未経験入職率も高く、40代・50代の転職者でも採用されやすい業種です。
現場を動き回りながら複数の業者を調整するのが主な仕事なので、デスクワークより体を動かしながら管理・調整するほうが向いている人に合っています。
7. 医療事務・介護職
介護職の有効求人倍率は3.97倍(厚労省2024年)で、人材不足は構造的な問題になっています。2040年には介護人材が約69万人不足するという推計もあり、長期的に安定した需要が見込まれます。
介護職の平均年収は処遇改善加算を含めて360〜400万円前後です。医療事務は未経験歓迎の求人が多く、資格取得と並行しながら転職活動を進められます。年収水準は高くありませんが、雇用の安定性と求人の多さは他の職種と比べても際立っています。
「人の役に立っていると実感できる仕事がしたい」という気持ちがある人には、続けやすい職種です。
8. 経理・財務
経理・財務は、どの業界でも必ず必要とされる職種です。転職市場でも2026年上半期に求人増加が確認されている分野のひとつで、特に中小企業での需要が根強くあります。
簿記2級を持っていると転職活動での評価が上がりやすく、未経験からでも取り組みやすい入口があります。平均年収は400〜600万円で、CFOや財務マネージャークラスになると800万円を超えるケースもあります。
業界を問わず需要があるため、転職を重ねても職種軸でキャリアを守れるのが経理・財務の大きなメリットです。「コツコツと数字を正確に扱うのが苦にならない」という人には、長く続けられる職種です。
9. Webデザイナー
Webデザイナーは、UI/UXデザイナーへのキャリアアップルートが増えていることもあり、需要が安定しています。FigmaやAdobe XDなどのツールを習得すれば、未経験からでも入門できる職種のひとつです。
平均年収は300〜500万円ほどで、フリーランスや副業と組み合わせることで収入を上乗せしやすい職種でもあります。リモートワーク対応の求人が多く、働き方の柔軟さを求める人にも選ばれています。
「見た目の細部が気になる」「デザインを見ていると時間を忘れる」という感覚がある人なら、スキルの習得も続けやすいはずです。
10. 人事・採用担当
採用DXやHRテック(人事×テクノロジー)の活用が広がっていることで、人事・採用担当の求人も増えています。doda 2026年上半期のデータでも、人事分野は求人増加9分野のひとつです。
平均年収は400〜550万円で、HRBPやHRディレクターになると700万円以上になるケースもあります。営業・接客・教育業界出身者がスライドしやすい職種で、前職の経験を活かしながら職種を変えたい人に向いています。
組織の課題に関心があって、人と話すのが好きな人には、自然に力を発揮できる仕事です。
職種を選ぶときに比べたいポイント
10の職種を見てきましたが、「どれが自分に合うか」はまだ決めにくいと感じる人もいるはずです。職種を選ぶときに比べるべきポイントは、大きく3つあります。
未経験でも入れるかどうか
転職活動を始めるうえで、まず確認したいのが「未経験から入れるかどうか」です。職種によって未経験歓迎の求人割合はかなり差があります。
| 職種 | 未経験歓迎率の目安 |
|---|---|
| 販売・接客 | ほぼ100% |
| 営業職 | 約62% |
| 一般事務 | 約65% |
| ITエンジニア | 約48% |
| Webデザイナー | 約40% |
ただし「未経験OK」の裏側には、研修期間の長さや最初の年収水準の低さが隠れていることがあります。入りやすさだけで選ぶのではなく、「入った後のキャリアがどうなるか」まで確認することが重要です。
年収の上がり方
入口の年収だけ見て転職先を選ぶと、3年後に「思ったより上がらなかった」と感じることがあります。大事なのは入口年収ではなく、3〜5年後にどこまで上がるかのルートが見えているかどうかです。
たとえばSaaS営業は未経験スタートでも数年でインセンティブ込みの年収が大きく伸びる職種ですし、ITエンジニアも転職を重ねることで年収700万円以上を目指せます。一方、医療事務や介護職は年収の伸びが緩やかでも安定性が強みです。年収の上がり方より「自分のゴールに合っているか」で選ぶほうが、転職後の満足度が高くなります。
リモート・働き方の柔軟さ
転職先を選ぶ基準として、働き方の柔軟さを重視する人が増えています。職種によってリモートワーク対応の状況は大きく異なります。
WebマーケターやITエンジニア、Webデザイナーはリモート対応求人が多い職種です。カスタマーサクセスや人事・採用担当も、SaaS企業を中心にリモート対応が進んでいます。一方、施工管理や介護職は現場に出ることが仕事の本質なので、フルリモートにはなりません。ただしその分、雇用の安定性と将来的な需要の高さがあります。
転職しやすい職種と難しい職種の違い
同じように転職活動をしていても、すんなり決まる人と苦戦する人がいます。その違いは運ではなく、職種の選び方と準備の差にあることがほとんどです。
求人倍率が高い職種の特徴
求人倍率が高い職種は、選考の難易度が下がる傾向があります。需要に対して供給が少ないため、採用側が条件を緩めやすいからです。
職種別の求人倍率を見ると、建設・採掘職が5.76倍、介護職が3.97倍、ITエンジニア系が2.8〜3.5倍前後と、特定の職種で高い水準が続いています。
ただし倍率が高い=すぐ採用されるわけではありません。求人が多い職種はミスマッチも起きやすく、「入ってみたら思っていた仕事と全然違った」というケースも少なくないです。倍率の高さは「選考を通りやすい」というよりも、「求人が見つかりやすい」という意味で理解しておいてください。
スキルなしで転職すると失敗しやすいケース
「とりあえず未経験歓迎の求人に応募する」という動き方は、転職後にミスマッチを起こしやすいです。特に前職との職種の距離が遠すぎると、入職後に「こんなはずじゃなかった」となりやすい。
職種が大きく変わると前職の経験が活かされず、年収が下がるケースも多いです。一時的な年収ダウンならまだしも、スキルが積み上がらない職種に入ってしまうと、次の転職でも評価が上がりにくくなります。
「入口の広さ」より「出口(キャリアの先)」から逆算して職種を選ぶことが、転職の失敗を防ぐ一番の方法です。
自分に合う職種の絞り方
10の職種を見てきても、「どれが自分に向いているかわからない」という感覚は残るかもしれません。そのときに使える絞り方を3つ紹介します。
前職の経験を活かして選ぶ
転職で年収を落としにくいのは、業界は変えても職種は活かすパターンです。たとえば前職で営業をしていた人がSaaS企業の営業に転職する場合、業界は違っても「営業スキル」という軸は継続しているので、選考でも評価されやすくなります。
転職の方向性には大きく2パターンあります。「異業種×同職種」(業界を変えて職種は継続)か、「同業種×異職種」(業界は変えず職種を変える)かです。どちらも可能ですが、両方を同時に変えようとすると即戦力として評価されにくくなります。特に30代以降は、どちらかの軸を残すほうが転職活動がスムーズになります。
やりたいことより「続けられること」で選ぶ
「やりたいことで仕事を選ぶ」は理想ですが、転職後1〜2年でまた辞めてしまうのを防ぐためには、「続けられること」のほうが実は重要です。
続けられるかどうかの見極めには、「得意なこと」より「苦にならないこと」が参考になります。得意なことはいずれ「できて当たり前」になりますが、苦にならないことは長期間でも疲れにくいからです。たとえば「数字を見るのが苦痛ではない」ならデータアナリスト、「人に説明するのが苦にならない」なら営業や人事、という逆引きの発想が有効です。
30代・40代が職種選びで気をつけたいこと
20代のうちはポテンシャルで採用してもらえる場面が多いですが、30代以降になると即戦力として評価されることが前提になってきます。「未経験歓迎」の求人でも、20代よりハードルが上がるケースが増えます。
だからこそ30代・40代の転職では、施工管理・経理・人事など「これまでの経験を活かしながら職種を少し広げる」選択が現実的です。転職回数が多くても、職種の専門性がつながっていれば評価に影響しにくくなります。
市場価値は「転職回数」ではなく「職種の専門性と深さ」で作られます。 30代・40代での転職こそ、職種軸を意識した動き方が大切です。
まとめ:自分のゴールから職種を選ぼう
今回紹介した10の職種は、どれも2026年の転職市場で求人が増えていて、将来的な需要も見込める職種ばかりです。「転職しやすさ」と「稼ぎやすさ」は別軸で考えること、そして職種は業界より先に決めることが、転職活動を進めるうえでの大事な出発点になります。
職種を選ぶ正解は一つではありません。年収を上げたいのか、働き方を変えたいのか、長く続けられる仕事をしたいのか。そのゴールによって、選ぶべき職種は変わります。「続けられること」「前職の経験が活きること」「3〜5年後のキャリアが描けること」の3点を軸に、自分に合った職種を絞ってみてください。

